「マイホームを売って3,000万円特別控除を使うつもりだが、相続した土地の分もまとめて申告する場合、取得費加算の特例も一緒に使えるのだろうか」——取手市や利根町で不動産の売却をお考えの方から、こうしたご相談をいただくことがあります。3,000万円特別控除(居住用財産の譲渡所得の特別控除)と取得費加算の特例は、どちらも譲渡所得税を軽減できる制度ですが、対象となる不動産の性質によって「併用できる場合」と「選択適用(どちらか一方しか使えない)になる場合」があります。この記事では、当店の別記事で解説しているマイホームの3,000万円特別控除を前提に、取得費加算の特例との関係を整理し、どちらを選ぶべきかの判断材料を解説します。
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取得費加算の特例とは何か
取得費加算の特例とは、相続または遺贈によって取得した不動産を、一定期間内に売却した場合に、支払った相続税額の一部を「取得費」に加算できる制度です。取得費が増えるということは、売却時の譲渡所得(利益)がその分圧縮されるということであり、結果として譲渡所得税・住民税の負担を軽減できます。国税庁の規定(措置法39条)に基づく制度で、相続税を実際に納めた人だけが対象になる点が最大の特徴です。
制度の趣旨
相続財産に相続税が課税されたうえで、その財産を売却した際にも譲渡所得税がかかると、同じ財産に対して税負担が重複しているように感じられます。この重複感を緩和するために設けられているのが取得費加算の特例です。
3,000万円特別控除(マイホーム特例)との違い
3,000万円特別控除は「自分が住んでいた家」を売却する際に使う特例で、相続税を納めているかどうかは要件になっていません。一方、取得費加算の特例は「相続税を納めた人」が対象で、居住の実態は問われません。この2つは、そもそも制度の狙いが異なる特例です。
対象となる譲渡所得の考え方の違い
3,000万円特別控除は譲渡所得から最大3,000万円を直接差し引く「控除型」の特例です。これに対し、取得費加算の特例は取得費を増額することで譲渡所得そのものを圧縮する「加算型」の特例であり、計算のアプローチが根本的に異なります。
併用できるケース・できないケースの整理
ここが最も誤解されやすいポイントです。同じ「3,000万円控除」という言葉でも、どの制度を指すかによって取得費加算の特例との関係が変わります。

マイホームの3,000万円特別控除との関係
相続によって取得した家に、相続後に相続人自身が住み、それをマイホームとして売却する場合に使う「居住用財産の3,000万円特別控除」は、取得費加算の特例と併用が可能です。つまり、相続税を納めたうえで、その家に自分が住んでからマイホームとして売却したようなケースでは、両方の特例を使って税負担をさらに軽減できる可能性があります。
相続空き家の3,000万円特別控除との関係(併用不可)
一方、被相続人が一人で住んでいた家をそのまま空き家として売却する場合に使う「相続空き家の3,000万円控除」は、取得費加算の特例と選択適用となり、併用はできません。当店の別記事「相続空き家3,000万円控除|取手市の手続きと期限」でも触れているとおり、この2つはどちらか有利な方を選ぶ必要があります。マイホーム特例と相続空き家特例は名前が似ていますが、対象となる家の状態(住んでいたか、空き家のままか)で適用される制度が変わる点に注意が必要です。
取得費加算の特例を使うための要件
相続税を納めていること
大前提として、その財産の取得について相続税が課税され、実際に納税していることが必要です。相続税がかからなかった(基礎控除内に収まった)場合は、この特例自体を使うことができません。
相続開始から3年10ヶ月以内の売却
相続開始があった日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで(相続開始からおおむね3年10ヶ月以内)に売却する必要があります。この期限を過ぎると特例は使えなくなるため、相続税の申告と売却のスケジュールを合わせて考えることが重要です。
相続や遺贈により財産を取得していること
生前贈与によって取得した財産は対象外です。あくまで相続または遺贈によって取得した財産の売却が対象となります。
取得費加算額の計算方法
取得費に加算できる金額は、以下の計算式で求めます。
加算額 = その者が納めた相続税額 ×(売却した財産の相続税評価額 ÷(その者の相続税の課税価格+債務控除額))
計算例
たとえば、相続税を600万円納め、そのうち売却した不動産の相続税評価額が2,000万円、課税価格の合計が6,000万円だった場合、加算額は次のようになります。
600万円 ×(2,000万円 ÷ 6,000万円)= 200万円
この200万円が取得費に上乗せされ、譲渡所得(売却価格-取得費-譲渡費用)を計算する際の取得費側に加算されます。譲渡所得が200万円圧縮されるということは、長期譲渡所得の税率20.315%で計算した場合、約40万円の節税効果があることになります。
マイホーム特例と取得費加算を併用する場合の計算順序
併用可能なケースでは、まず取得費加算の特例で取得費を増額し、その後の譲渡所得から3,000万円特別控除を差し引く、という順序で計算します。
併用計算の具体例
売却価格3,500万円、通常の取得費800万円、譲渡費用150万円、取得費加算額200万円のケースで考えます。
譲渡所得 = 3,500万円 -(800万円+200万円)-150万円 = 2,350万円
ここから3,000万円特別控除を適用すると、課税対象額は0円になります。取得費加算を使わなかった場合の譲渡所得は2,550万円で、控除後も同じく0円ですが、譲渡所得が3,000万円を超えるような大きな売却では、取得費加算を併用することで課税対象額そのものを圧縮できる意味が大きくなります。
どちらを優先すべきか、判断のポイント
譲渡所得が3,000万円を大きく超える見込みの場合
マイホーム特例の3,000万円を超える利益が見込まれる場合は、取得費加算を併用することで課税対象額をさらに圧縮できるため、忘れずに申告に含めるべきです。
相続空き家特例か取得費加算かで迷う場合
売却益が3,000万円未満に収まりそうであれば相続空き家特例(3,000万円控除)を選ぶ方が有利なケースが多い一方、相続税を多く納めており売却益がそれほど大きくない場合は取得費加算の方が有利になることもあります。個別の試算が必要なため、税理士への確認をおすすめします。
相続人が複数いる場合の注意
取得費加算額は相続人ごとに、その人が実際に納めた相続税額をもとに計算されるため、共有名義で相続した不動産を売却する場合は、各相続人がそれぞれ自分の納税額に応じた加算額を計算する必要があります。
確定申告での必要書類
相続税の申告書の写し
取得費加算額の計算根拠として、相続税の申告書(第1表・第11表・第11の2表など)の写しが必要です。
取得費加算に関する計算明細書
国税庁の様式「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」を作成し、確定申告書に添付します。
譲渡所得の内訳書
マイホーム特例を併用する場合は、居住用財産の3,000万円特別控除の適用を受ける旨を記載した譲渡所得の内訳書もあわせて必要になります。
取得費加算の特例に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 取得費加算の特例と3,000万円特別控除は必ず併用できますか?
A. いいえ。マイホームとして売却する場合の3,000万円特別控除とは併用できますが、相続空き家の3,000万円特別控除とは選択適用となり、併用できません。どちらの3,000万円控除を使うのかによって結論が変わります。
Q2. 相続税を納めていない場合はどうなりますか?
A. 取得費加算の特例は、相続税を実際に納めたことが前提の制度のため、相続税が基礎控除内に収まり納税していない場合は適用できません。
Q3. 相続してすぐに売らないと使えませんか?
A. 相続開始から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで(おおむね3年10ヶ月以内)に売却すれば適用可能です。急いで売る必要はありませんが、期限管理は必要です。
Q4. 取得費加算額はどこで確認できますか?
A. 相続税の申告時に使った申告書の内容から計算します。相続税の申告を依頼した税理士に確認するか、申告書の控えをもとにご自身で計算することも可能です。
Q5. 取得費加算の特例の適用漏れに気づいた場合、あとから申告できますか?
A. 確定申告の期限後に気づいた場合でも、更正の請求という手続きで一定期間内であれば還付を受けられる可能性があります。早めに税務署または税理士にご相談ください。
Q6. マンションの共有名義でも取得費加算は使えますか?
A. 相続や遺贈で取得し、相続税を納めていれば、マンションや共有名義の不動産でも要件を満たせば取得費加算の特例を使うことができます。
まとめ
取得費加算の特例は、相続税を納めた方が不動産を売却する際に見落としがちな節税制度です。マイホームとして売却する場合の3,000万円特別控除とは併用が可能ですが、相続空き家の3,000万円控除とは選択適用となる点を正しく理解し、ご自身のケースでどちらが有利かを事前に試算することが大切です。取手市・利根町エリアで相続不動産の売却をお考えの方は、当店までお気軽にご相談ください。
▶ さらに詳しく:基礎控除の重要性:不動産売却で知っておくべき基本と特例
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